保土ヶ谷モックセンター のブログ

携帯電話スマートフォンのモックアップを販売している保土ヶ谷モックセンターの中の人のブログです。最低週に1度は更新したいと思います。弊社の業務に関するお問合わせは弊社ホームページのお問い合わせフォームや電話窓口にお寄せ下さい。

携帯電話割賦販売方式の功罪

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 日本の携帯電話キャリアが初めて携帯電話端末を割賦販売(分割払い)するようになったのは、2006年のソフトバンクからとなります。


 Vodafoneからモバイル事業を引き継いでからまだそれほど年月が経っていなかった当時のソフトバンクモバイルが抱えていた課題として、グローバル化された端末を契約後にすぐに解約されて海外に転売されるという問題が横たわっておりました。前身のVodafoneは「Vodafone Global Standard」を合言葉のようにしており、ドコモやauとは違い3GとGSMのデュアル端末を複数ラインナップしておりましたので、そういう方向性の人々のターゲットになってしまったのです。
 ですから、短期解約されても最低限端末代くらいは支払ってもらえるようにという考えから、割賦販売を始めたわけです。


 割賦販売の名称を「スーパーボーナス」としたのは今振り返っても違和感しか無いのでありますが、なんとなく後ろ暗いイメージのある割賦販売をポジティブなイメージにすり替える、ある種の印象操作的な手法がうまくフィットし、10年以上経った今でも引き続き利用され続けております。



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 ドコモやauは当初は割賦販売に追随する考えを見せていなかったものの、2007年に入って当時の総務省から「端末を安く売ると資金力に乏しい新興キャリアのイーモバイルには不利になる」という理屈で端末を高く売るように指導をされた事から、やむを得ず端末価格の大幅値上げとセットで割賦販売を始めることとなりました。


 それまでドコモの携帯は、使用期間1年の携帯を機種変更するのに1万円から2万円くらい、auだと5000円から15.000円くらいだったものが、それぞれ3万円から6万円程度にまで大幅値上げとなり、その割高感を緩和するために、渋々割賦販売を始めることとなったのです。


 こうして大手3社が揃って割賦販売に参入する運びとなったわけですが、当時はまだ割賦販売をスムーズに進めるためのノウハウが構築されていないばかりか、消費者自身もこういった環境の変化に適応できておらず、現場はやや混乱をきたしました。


 具体的には、割賦販売ではあるもののお客様にその事をほとんど告げずにしらっと契約を進める販売店がたくさんある一方で、昔ながらの個人経営的な小規模併売店の中には真正直に割賦販売の詳細をしっかり説明した事によってかえって顧客離れを招いたお店も少なくなく、要するに「嘘をついたモノ勝ち」状態となりました。


 弊社は当時地元川崎で併売店をオープンしており、私自身のポリシーとしてオプション契約の強制契約的なものを極力排除して顧客本位の携帯ショップを経営しようとしていた関係で割賦販売についても真面目に説明しようと取り組んだのが仇となって、商店街の別のお店の商店主に「あのお店はべらぼうに高い」ととんでもない噂を振りまかれたりして精神的にも追い詰められ、結局経営不振で店を畳まざるを得なくなりました。

 また、モック屋さんになってからお付き合いさせて頂くようになった様々な携帯ショップの中でも私と同じような経験をしている所が少なくないのを幾度となく目の当たりにして、頭がクラクラする毎日を過ごしておりました。



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 割賦販売の説明ほど面倒で、お客様に煙たがられるものはありません。ただでさえわかりにくい料金プランの説明で煙たがられ、さらにとどめを刺すように割賦販売の説明をしなければならない携帯ショップの店員さんの心中を察すると、ついつい説明を大幅に端折ってさっさと進めたくなるのも、わからないでもありません。


 そうやって割賦販売の説明を端折る携帯ショップだらけとなり、やがてそれが様々な消費者トラブルへと発展し、まずは「レ点商法」と呼ばれる、「説明を聞いて理解できたらチェックボックスにレ点を入れてください」という接客が行われるようになり、それでもまだ消費者トラブルの類が沈静化せずに燻り続け、お客様も販売店もキャリアもみんながそれぞれ不満を募らせ続けているうちに、そもそも割賦販売が全社展開となった要因のイーモバイルがいつの間にかなくなっていて、一体誰が何の為にこんな面倒くさくてわかりづらい事をやらなければならなかったのかと、徒労感だけが残る悲劇となりました。


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 端末を高く売れと指導した当時の総務大臣は今の官房長官であらせられるわけですが、あの指導がきっかけで多くの日本メーカーおよび国内生産拠点が閉鎖され、失業者を出し、そして消費者トラブルを量産した事に対する総括も何もないまま立派に出世を果たされている事に、ただただ不満を覚えているという所でしょうか。


 もうこの際、消費者トラブルの根源である割賦販売を止めて、インセンティブモデルを復活させても良いのではないでしょうか。第一、あの指導の契機となったイーモバイルは既に存在しませんし、MVNOの登場によって市場の活性化もある程度達成されたといえると思います。

 ですから、旗振り役の現官房長官に素直にあれは失策だったと認めてもらって、各キャリアの裁量で自由に販売方法を決められるように仕切り直しをしてはどうでしょうか。

 そうする事でスマートフォンの販売台数がかつてのような年間5000万台までは無理でも、また平均買い替えサイクルが2年前後にまで短縮されるようになればその分お金も周り、ARPUが上がることで消費者物価指数も上昇して日銀黒田総裁の表情に笑顔が戻ってくるのではないでしょうか。


 端末の割賦販売は端末債権の証券化というソフトバンク錬金術に化けただけで、つまりソフトバンクの中の人以外のだいたいの人にとってはデメリットしか無かったと言えるでしょう。ですから、日本の携帯業界、および日本経済全体へのカンフル剤として、インセンティブ方式の大復活を提唱したいと、そのように申し上げる次第であります。



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