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昨日、山梨県甲州市において痛ましい交通事故が発生致しました。
私もこの付近をよく通行しますが、狭い上にカーブも頻繁なこの道路を、非常に大きなトラックが昼夜問わずに多数行き交っており、とても危険だとかねてより感じておりました。
私自身の経験としては、この道路の神奈川県内、藤野駅近辺の見通しの悪いカーブで対向車の大型トラックが大幅にオーバーランして私側の車線を完全に塞ぐ形となり、正面衝突寸前の状況からたまたま道路左にあったお店の駐車場に車を突っ込ませるように回避して辛うじて事故を免れた、という恐ろしい出来事もありました。
という塩梅で、国道20号甲州街道の山梨県甲州市勝沼から東京都の八王子中心付近までのかなりの長い区間に渡り、狭い上に急なカーブが連続する区間にも関わらず、大型トラックに怖い思いをする事がしばしばである、という状況です。
そして、これに付け加えなければならない特記事項としては、よく観察してみると他県ナンバーの車ばかりなのが見て取れ、つまりコスト削減の為に高速道路を利用せず、狭くて危険な一般道を利用していると推測される状況が伺われます。
狭くて危険な一般道を利用せざるを得ない事はトラックドライバーの皆様の負担が増すだけでなく、近隣住民の平穏をも脅かす重大な問題ですから、これはもう個々人(もしくは企業)の自己責任で退けて良い話ではない、と私は考えます。
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先月にはこのような報道もありました。
駐車場所に行き詰まった大型トラックが道路のゼブラゾーンに駐車し、それが原因で死亡事故が起きてしまったというものです。
こういった場合、荷物の荷主が早着も遅着も認めない厳しい時間管理を課しているのが原因であるという批判の声が出る事があって、それも実際の大きな要因の一つであるに違いはないものの、他方で、大型トラックが車を止めて休息できる場所が、とりわけ都市部にはめったに存在せず、そのしわ寄せがこういった形で発露しているというのも見逃せないと、私は考えております。
しかしでは、土地の余裕が少ない都市部の一体どこに大型トラックの休息場所を設ければ良いのかという妙案もなかなか出てきにくいものですから、こういった問題の先送りが高度経済成長期からウン十年間に渡って続けられてきた、という経緯があります。
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大型トラックは全ての日本国民が利益を享受している欠かせない社会インフラの1つであるという点に、疑問を挟む余地は無いと私は思います。
「私は通販を使わずに全てお店で買ってます!」という人に対しても、そのお店に品物を運ぶ大型トラックが必要なのでありまして、離れ小島や山奥で電気もガスも水道も使わずに自給自足生活を送っている人でもない限り、大なり小なり大型トラックのお世話になっております。
そして、その大型トラックが上記のような厳しい状況に追い込まれ、さらにその大型トラックによって日々の平穏が脅かされているという状況もあるわけですから、この状況を打破するためにも、私は大型トラックの高速道路の料金を全て無償にしても良いのではないかと、申し上げたいと思います。
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そもそも論を申し上げれば、トラックを含めた自動車ユーザーは誰しもが、高速道路の建設費や維持管理費名目の費用としてガソリン税や軽油引取税という税金を、走れば走るほどたくさん納めております。
これらの税金が作られた当初は特定財源として用途が限定されておりましたが、それがいつの間にか一般財源化されて、いわば流用されている状況にあるわけです。
そういった状況ですから、そもそも高速道路の通行料金を取るという言い分からして理不尽なのですが、それに加えて、日本の有料高速道路の全てが「建設費を捻出するために通行料を徴収します!建設費を返し終えたら無料化します!」と念書に一筆書いて通行料の徴収を始めたというのに、とっくの昔に建設費の償還を終えた道路にまで相変わらず通行料を取り続けているは、さらに値上げまでするわで、高速道路の通行料とは一体なんなのか、その正当性が大いに疑われる状況であるわけです。
ですから私は2009年の民主党政権誕生時に彼らが掲げていた高速道路の無料化に大いに期待したものでしたが、それはそれとして、現実的な対応として申し上げたいのは、大型トラックだけでも良いから無料化して上げて欲しい、という事です。
それを実現する為の費用として一体どれくらい必要になるでしょう。
高速道路運営会社は他にも中日本や西日本、首都高に阪神高速など様々ありますが、割合を抽出する元として今回はネクスコ東日本のデータを参考にします。
そしてそのネクスコ東日本のデータによれば、1日あたりの通行台数が2,888,327台で、そのうち大型車と特大車の通行台数が285,962台ですから、全体の約1割となります。
といってもこの1割の全てがトラックなのではなく、バスや工事用車両なども含まれます。
また、高速料金は車体が大きくなればなるほど高額になる仕組みですから、通行台数比が1割だから売上も1割だとは言えません。そこまで詳しく精査するのは大変なので今回は割愛するとしますが、いずれにせよ、仮に大型トラックの料金を無償化しても、それによって必要になる財源は、無料化によって通行台数が増える分を加味しても、たかが知れていると言えるのではないでしょうか。
ネクスコ3社の年間の総売上が約3.6兆円です。その他首都高速等の分を含めても4兆円を少し超える程度に過ぎませんから、仮にそのうち1割を国が補助する事としても5,000億円を下回る程度で、全ての日本国民がメリットを享受している社会インフラの為の予算措置としては、充分納得を得られる範囲と呼べるのではないでしょうか。
民主党政権が高速無償化を進めようとした際に生じた課題は旅客業界の反発と財源問題が主だった所でしたから、それらを念頭に置き、反発と財源の双方で折り合いをつける形で、国費で大型トラックの高速料金を無償化するという手立ては、実現可能だと私は考えます。
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大型トラックの高速料金を無償化する事で得られるメリットとして私が考えているのが、地方における産業の活性化です。
都市部にモノを運ぶコストや時間が縮減できるならば、都市部やその近郊で行われている生産活動の拠点を地方に移しても良いと考える事業者は少なくないでしょう。
これがそういった企業の背中を押す秘策となるならば、現政権が掲げる重要課題の一つである地方活性化のカードである、とも言えるでしょう。
また、これから物流の無人化が進むと言われておりますが、その実現が先に進むのは一般道よりも高速道路になるでしょうから、大型トラックの高速無償化はこういった課題解決にも即しております。
つきましては、次期参院選に向けて国民へのアピールを行いたい政治家の皆様方に、どうかご検討を頂きたく、お願いをする次第であります。
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