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最近は農作業が楽しくて楽しくてついついご無沙汰してしまいましたので、久しぶりにブログを書いてみようと思います。
最近は我が国におけるキャッシュレス化うんぬんの話題が盛んに取り沙汰されるようになりました。
その大きな要因は消費増税に伴う負担軽減策として、キャッシュレスでお買い物をされた方にポイント還元するような事を政府が考えているという一連の報道だと思いますが、それ以前にも中国でキャッシュレス化が爆発的に進んでいて、今や我が国が時代遅れであるという風な論調をあちこちで見聞きしております。
ですから、様々な人々がキャッシュレスのさらなる拡大を望んでいる現状があるという事だと思います。
ただし、その一方で、だからその論調に素直に乗れるかと言いますと、とりわけ中小零細企業の多くがその負担に耐えきれないのではなかろうかと危惧する声も少なくありません。
そして、単なる第三者として賛成派反対派の論調を見比べてみますと、おおよそ自分たちが言いたいことを投げつけあっているだけで、双方で歩み寄って妥協点を見出そうという所まで議論が進んでおらず、これでは今後どのような結論となるにせよ、まだまだ時間がかかりそうだという風に私は感じております。
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賛成反対の妥協点を見出していく為に、「なぜ我が国ではキャッシュレス化が進まないのか?」と、「なぜ中国ではキャッシュレス化が進んだのか?」を同時並行で見ていく必要があるように思います。
なぜ我が国ではキャッシュレス化が進まないのか?
- 決して少なくないカードの手数料がかかる
- 決済端末の導入費用がかかる
- 現金を受け取れるようになるまで数十日程度待たなければならない
企業や団体にとっての売上とは、会社員や公務員の方々が勤務先から受け取る給料と同じ性質を持ちます。
ですから、売上の支払いをクレジットカードで受け取るというのは、勤め人が会社の経営陣から「今月の給料から5%引いておくから!」「あ、あと給料の振込は来月末だから!」と言われるのとイコールであります。
そんな事を言われても、皆さんは心中穏やかでいられますでしょうか?中小零細企業の多くは心中穏やかではいられないからキャッシュレス化の導入を渋っているのであって、そこは皆さんにも当事者意識をもって頂きたいと私は思います。
なぜ中国ではキャッシュレス化が進んだのか?
- 中国では偽札がものすごい数横行していて信用ならないから
- アリババやテンセントなどの決済会社が普及促進のため決済手数料ゼロのキャンペーンでしのぎを削ったから
- 決済端末が不要だから
我が国では偽札の流通がほとんど行われていない上、偽造カードの被害額が年間100億とも120億とも言われております。ですからこの点については中国と我が国の事情が全く逆なのだという事を念頭に置く必要があります。販売店で偽造カードを使われた場合、その被害を被るのは販売店となるケースも相当数あるそうですから、では信用力のある我が国の紙幣通貨で現金受け取りにしたほうが安心安全という判断に向かうのが至って自然であります。
また、数年来キャッシュレス化の推進拡大が謳われている割には、決済手数料を一時的にでもゼロにするとか、中小零細企業でも格段に安く利用できるといったようなキャンペーンはどの決済会社も行っておらず、旧態依然とした印象さえ残ります。売上金の支払いサイト(振込までのタイムラグ)は会社によってまちまちで1週間程度で振り込んでくれる会社もあるそうですから、ここだけは評価できるポイントと言えましょう。
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弊社ではクレジットカードで代金を支払って頂くための受け皿として世界的に有名なペイパルを利用しています。決済手数料がトータルで4%程度かかるのは弊社のような零細企業にとって決して軽くない負担ですが、それを織り込んだ価格設定としておりますので、現金払いのお客様に対する申し訳無さみたいなものも持ち合わせています。
そして、では仮にこの度世間で議論されているような、主として実店舗を構える中小零細企業の場合にどうすれば良いのかという事で考えるとペイパルでとはなかなか言えませんし、現行サービスの類が充分だとも感じません。
ですから私なりにおおまかではありますが、中小零細企業でも比較的取り入れやすいキャッシュレスシステムを考えてみました。
それはヤフーマネーのスキームを一部改造したものとなります。
中小零細企業の実店舗に何らかの形でヤフーマネーのシステムを置き、売上金の決済を担わせます。代金を受け取った中小零細企業は、そのヤフーマネーで仕入れ、水道光熱費の決済を行うことができるようにします。それとともに、ジャパンネット銀行の口座と連動できるようにして、ヤフーマネーで従業員の給与を支払えるようにします。
ヤフーマネー側はこれらトータルの決済で収益を受け取る代わりに、実店舗における代金受取時の決済手数料を極力ゼロ近くに抑える事を求めます。
そうする事で
- 決して少なくないカードの手数料がかかる
- 決済端末の導入費用がかかる
- 現金を受け取れるようになるまで数十日程度待たなければならない
といったキャッシュレス化を導入しない理由を虱潰しにしていく事ができますし、よって中小零細企業の導入も捗るようになるのではないでしょうか。
また、これはもちろんヤフーマネーに限ったことではなく、楽天グループも配下に楽天銀行や楽天カードを擁しているので、中国における「アリババVSテンセント」のサービス合戦の構図を作り出すことが出来るのではないでしょうか。
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携帯電話におサイフケータイが実装されたのは今から十数年前に遡りますが、私は当時からおサイフケータイのようにリスク要因を一つの場所に集中させる事に否定的な考えを持っています。
例えば日頃の支払いの多くをおサイフケータイに依存させた場合、携帯が壊れた時にどうするのか。電池がなくなった時にどうするのか。停電になった時にどうするのかといった、ごくごく身近にあるリスクに簡単に負けてしまうわけです。
今も瀬戸内海の周防大島において全島的に停電に遭われていると言いますし、先だっての台風や地震の影響で北海道や近畿地方の広範囲に渡って停電が続いたのも記憶に新しい所ですので、そういったリスクにどうやって備えるのかを考えず、平時の利便性だけに囚われ過ぎている昨今のキャッシュレス化推進論に、やや冷めた目で見ているのが私の現状です。
ですので、来年の消費増税に合わせて不十分なリスク対策のまま無理やりキャッシュレス化を推進していくことについて反対するとともに、賛成派反対派がそれぞれ歩み寄って実りある議論が進められることを切に願う所であります。
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