モックセンター のブログ

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「理不尽に耐える」という謎文化

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夫の育休直後に転勤命令「信じられない」妻が告発 カネカ「コメントは差し控えたい」
https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/ikukyu



 大企業勤めの方々の間では「マイホームを建てた途端に転勤を命じられる」のがよくある話なのだとかねてから聞いておりました。

 それ自体なかなか理不尽というか、私だったら躊躇わずに辞めちゃうな、と思っているのですが、今回のカネカ社の件は「マイホーム建てた&子供が生まれた」の2階建てとなっておりまして、大企業に勤めるというのは、かくのごとき厳しいものなのだなぁと、大企業に勤めていない自分にホッとしたりもしている今日此の頃となっております。


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 マイホームを建てた途端に転勤が命じられる背景には、誰しもが転勤を嫌がるので、転勤を嫌がって退職するパターンになりにくいマイホームを建てた社員に白羽の矢を立てるスキームが構築されたから、だと言われております。

 マイホームを建てて住宅ローンを堅実に返済しなければならない社員なら辞めたりしないだろうという、雑な言い方をすれば弱みを握って逃れられないように羽交い締めにした、みたいな文脈だと思います。

 しかし、だとするならば今回のカネカ社の件は当該社員さんが辞職するに至っており、結局カネカ社からすれば貴重な戦力を失うわ、また別の転勤要員を探さねばならないわ、おまけに世論が大炎上するわで、むしろ思惑を外して大失敗しているようにしか見えないのでありますが、そういった上層部の戦略をいまいち理解していない現場レベルからすれば「なるべく辞められないように」という思惑よりも、「転勤という罰ゲームを拒んだから死刑にしてやったぜイッヒッヒ」みたいな雰囲気が見え隠れして、第三者である我々からは薄ら寒いものを覚えずにはいられないという感じでしょうか。


 ヤマタノオロチに差し出すための生贄になるのを拒んだ小娘とその一家を、一族郎党もろとも皆殺しにする村の衆。そのような構図ではないでしょうか。


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 この件から少なくとも読み取れる確実な事としては、カネカ社の内部においては「転勤は嫌なもの」とされているという事かと思います。


 で、その「転勤は嫌なもの」というムードをそのままたなざらしにして、毎年誰かを人身御供とか人柱みたいな形で送り込むという事を続けてきた無為無策ぶりも、また間違いない所なのかなと思われます。


 そこからして私は、だったら制度を変えればいいのにと思わずにはいられないのです。


 学卒採用や中途採用の段階で将来○○地方に転勤する事を含んで採用し、本社でスキルアップしてある程度の水準に達したらその地方に転勤するといった風にすれば、そこで働く人々の満足度向上にも繋がっていく事でしょう。少なくとも転勤を押し付け合う構図が相当緩和するのは間違いありません。

 このプランはあくまで一例に過ぎませんで、要するに「転勤は嫌なもの」というムードを改善する努力をほとんどやらずにきたことに、如何なものかという気持ちを抑えられません。


 それこそ、理不尽に耐える事そのものが目的化しているのでは?とさえ思えてくるのであります。

 あたかも江戸時代の参勤交代のように。


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 昔の話で大変恐縮ですが、私は今から30年近く前の中学生時代に、いかにも前時代的なゴリゴリの体育会系気質の野球部に属しておりました。

 「練習中は水を飲んではいけない」をリアルに体験してまいりました。


 それで1年生から2年生に進級して「後輩」が登場するという少し前の時期の思い出話なのですが、この前時代的な体育会系社会の異様とも言える上下関係に嫌気が差していた同志であり仲の良い部員のMくんとH君との何気ない会話の中で「少なくとも俺たちだけは後輩に無駄に先輩風を吹かすのは止めよう」という話になり、かなり固く誓いあった事がありました。

 しかしいざ後輩が登場してみるやいなや、早速Mくんが無駄に先輩風を吹かせまくって、それこそ強風波浪警報の発令もありうるという位の惨状になるのを目の当たりにしたのでありました。


 一体なぜなのか。私は落胆の色が隠せませんでした。

 もちろん私はMくんを問い詰めたわけですが、Mくんのコメントは結局そんなに筋の通ったものではなく、この謎めいた因習の継承者として生きていく決意みたいなものを聞かされただけで終わったのでありました。


 時々先輩から「俺のことを本当に先輩だと尊敬しているのか!」と意味不明に怒鳴られ、そしてそれに対して「本当に尊敬してます!」と大声で返答するような日々を、我々の世代も継承するしかなかったのです。

※ 私は後輩に対してそんな事は言いませんでしたが。
 
 あの無力感みたいなものは、今でも私の脳裏に深く刻み込まれ、そして私のそれからの人生に大きな影響を及ぼしていく事となったのでありました。



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 最近は女性のパンプスを履くのがどうとかという事で賛否両論の状況のようですし、私と同世代でまっとうな生き方を選んだ方々の間ではPTA活動の是非が盛んに議論されているようですし、要するにこれまで少なくない人々が不平不満を覚えていた様々な事象に対して異を唱えるカルチャーが芽生えつつありまして、私はそれを好意的に捉えております。


 PTAにしてもパンプスにしても私の幼馴染のMくんのような伝統の継承者たらんとする人々が強硬に伝統継承を吠えたりする状況もあって、それはそれで民主主義社会ですので好きに言わせておけば良いのでありますが、カネカ社のような、組織がその理不尽とも言える伝統を強硬に残していこうとするのであれば、そんな組織はくだんのカネカ社の社員さんのように見切りをつけて、理不尽を解消する意欲を持った組織に移るという事が大事なのだろうと、私は思います。


 その伝統を守りたい人だけで肩を寄せあっていればいいじゃないですか。男子も女子も仲良くパンプスを履いてベルマーク集めでもしていればいいじゃないですか。そういう方向に持っていく事が必要なのではないでしょうか。


 そして、その理不尽な因習にがんじがらめになっている人々を遠巻きに眺めながら、のどかにスニーカーでも履いて平和に働く日々を送るほうが良いではないか、と私は思うのです。


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 世の中は人手不足だと言われつつも、他方でこのような前時代的な会社で必死に歯を食いしばって生きている方々も大勢おられるわけでして、何が本当で何が本当ではないのか、そう単純な事ではありません。

 ですから私は、この世の中にある様々な理不尽の、ほんの一つでも良いから解決解消する一助になりたいと思いながら、日々考えて生きているという感じなのであります。
 



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