モックセンター のブログ

携帯電話スマートフォンのモックアップを販売しているモックセンターの中の人のブログです。中の人はTVチャンピオンケータイ通選手権の出場者でもあります。最低週に1度は更新したいと思います。弊社の業務に関するお問合わせは弊社ホームページのお問い合わせフォームや電話窓口にお寄せ下さい。

携帯電話ユーザーの流動性を高めたいのであれば、端末と契約の分離を必要以上に推し進めてはなりません

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 携帯電話事業を所掌する武田総務相はかねてより「市場の流動性を高める」事を求めておられます。


 現在の携帯電話市場は市場の流動性が高まるようなシステム的なものがだいぶ整ってきているにも関わらず、政府が思ったほど市場の流動性を高める方向に進んでいないのが実情です。


 総務省が公表しているデータ(※)を見る限りにおいても、携帯電話市場全体のうちMVNOの市場シェアは年間1~2%しか伸びておらず、MNO大手3社のシェア変動も年間で1%動くかどうか、実に静かなここ数年間を過ごしているわけです。


※ 電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和2年度第1四半期(6月末))
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000173.html


 2012年に安倍政権が発足してから経済は色々と新しい動きを見せるようになりましたし、厳しい規制を緩めていこうじゃないかという雰囲気が携帯業界界隈でも醸成されつつあって、例えばSIMロックの解除関係もだいぶ変わりましたし、契約解除料は従前の1/10近い1000円になりました。
 そういった消費者に寄り添った動きが少なからずあったわけですが、それらの取り組みは必ずしも市場の流動性を高める事には寄与しなかったと評価するべきであります。


 だからこそ、本当に市場の流動性を高めようという意志があるならば、これまでのやり方を踏襲するのではなく、場合によってはこれまでと真逆の政策などを打って出る必要があるように私は考えます。



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 現在の私自身は一介のモック屋さんに過ぎませんが、今でも月に何度かはお取引先の携帯ショップで従業員の方と来店客のやり取りを間近に見る経験を重ねております。


 そういった姿をつぶさに見てきた感想としては、やはり昔も今も、シェアを動かすのに一番重要なのは端末を売る事だと痛感したのです。

 
 なぜなら、今でも消費者の多くは端末と契約はセットだと考えているからです。

 それを消費者のリテラシーも上がっていかない中で無理やり分離させようとしても、余計にわかりにくさが増して、別の会社に移る意欲を削ぎ落としてしまうだけではないかと私は感じたのです。



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 今から十数年前にSIMカード型の携帯電話が投入されました。それまでは携帯ショップで端末に直にROMを書き込むか、OTA(※)でROMを書き込まなければならなかったものが、形式上は端末と契約が分離される運びとなりました。


※ 携帯ショップと各キャリアの登録センターが連絡を取り合ってデータ化されたROMを書き込む方法


 しかしながら、それから10年近くに渡ってSIMロックの解除問題などが尾を引いて端末と契約がほとんど分離されていないも同然の状態が続いてしまい、一般的な消費者にもそれに準じたような知識しか広まっていきませんでした。


 だから国は様々な手立てを打って端末と契約の分離を更に推し進めて、それによって市場の流動性を高めようとしてきたのだと思いますが、この「端末と契約の分離」をこれ以上強力に推進した所で、それは市場の流動性を高める事に寄与しないばかりか、かえって市場を冷やす副作用ばかり強まっている状況です。

www.itmedia.co.jp


 ですから私はこの際、「端末と契約の分離」に固執するのを止めて、端末と契約は分離でも一体でもどっちでも良いという風に、いわば諦めたら良いのではないかと申し上げたいのであります。



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 世の中には携帯キャリアが端末を売る事を否定的に評価する向きも相当多いように見受けられます。それは知識の多くない消費者からの声というよりは、それなりにIQの高い、私からすれば雲の上の方たちの中にそういった意見が多いという風に感じています。


 しかし、それは現実に即していないと私は考えます。


 かつて日本の携帯電話が世界を圧倒的にリードしていた時代が有りましたが、その頃はiモードにしても写メールにしても、端末と契約が一心同体だったからこそ成し得た新サービスで世界をリードしていたのを忘れてはいけません。
 海外ではかなり早くから端末と契約が分離されていましたから、それぞれが必要最小限度の所で足並みを揃える必要がありましたが、日本は端末と契約が一心同体だったから最大限の所で、例えばパケット通信で28.8K通信をするとか、絵文字を使えるようにするといった、当時としては相当な無茶が出来たのであります。


 現在はAppleがそれに近い事をやっていて、Appleの端末とAppleのソフトウエアサービスが最大限の能力にチャレンジできる土壌を10年以上の長きに渡って継続できているわけでして、なんでもかんでも分離させれば良いというものでも無いと、これまでの日本式スキームを再評価する必要もあるのではないでしょうか。


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 これまで日本政府および総務省は端末と契約の分離こそが市場の流動性を高める事に繋がると信じて一直線で突き進んできた感じがありますが、残念ながらその理念は不十分だったと見直すべき時が来ております。

 ある程度の分離が必要なのは私も深く賛同する所ですが、昨年の法改正により、いよいよ適正な範囲を超え、過度な介入となっており、それによる治療の効果が無いばかりか、副作用で経済を冷やす悪影響を及ぼし始めています。


 「市場の流動性を高める」事が重要なのか、それとも「端末と契約の分離」が重要なのか。

 どちらかを選ぶ時が来ていると、そのように申し上げる次第であります。


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