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弁護士ドットコムさんに昨日掲載されたこの記事を読み、少し首を傾げたくなるような部分を見つけました。
運営会社であるネットプロテクションズは、「悪用に伴う誤請求に関してはこれまでのケースではなかった、想定外だった」と回答した。
「これまでのケースにはなかった」との回答が出ていますが、5年前に弊社がその当事者として関わった事案がネットプロテクションズ(以下NP社)社内に正しくフィードバックされていないのでは?と思ったわけです。
hodogayamockcenter.hatenablog.com
弊社は2018年までの「保土ケ谷モックセンター」を名乗っていた時期にNP社の後払い決済システムを導入しており、そしてこのような事案に出食わした経験を有しております(※)。
このブログ記事の中でも触れていますが、これはNP社特有の事件ではなく、当時まだヤフー傘下に収まる前のゾゾタウンでも同種の事件が起き、産経新聞の記事にもなっています。
ですから、目立ってはいないものの、されとて特段新しい犯罪手法でも無いのでは?と言えるかと思います。
私としては今回の弁護士ドットコムさんの記事にある事案や運営会社の回答を批判したり非難したりする意図は毛頭なく、これ以上被害をうまない為に、私自身が経験した中で感じた事などに少し触れておきたいと、今回思い立った次第です。
※この事案は2017年10月に一応の解決をしております。
https://hodogayamockcenter.hatenablog.com/entry/2017/10/17/110000
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2017年に起きた事案で私は、被害側である一般人の方、NP社、神奈川県警、そして加害側の全ての方と繰り返しコミュニケーションを取りました。
この種の後払い決済システムというのは、ある程度のトラブル発生リスクと貸し倒れリスクを織り込み済みで、「トラブルが起きてもドンマイ!」というゆるい塩梅の欧米的な考え方に基づいて事業を進められていると私は感じました。
ミスをミスとして寛容に受け止める気風。自動運転車が歩行者を轢いて死なせてしまうかもしれないけど、それでも公道でチャレンジする気風、とでも言いましょうか。
そしてそのゆるさに目をつけた加害側が居て、そのような動きがあるのを全く知らずに被害に巻き込まれる被害者、という構図があるように思われました。
被害側である日本人の気質としては、ちょっとしたトラブルが起きる度に「誰が責任を取るんだ!」と憤る声が降り掛かってきて関係者が謝罪会見をする運びになるような、ミスを許さない思想が根底にあります。
ですから被害者が購入した覚えのない品物の代金が請求される事案に強い恐怖や憤りが生じるのも無理もありません。
つまり運営側の考え方と、全くの第三者の日本人被害者の考え方にあまりにも大きな隔たりがあり、とりわけ被害側が感じる憤りを増幅させやすい状況にあるのではないか?と、私は思いました。
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保土ケ谷時代の弊社は売上拡大路線を志向していましたので、その一環としてお客様にご利用いただける決済サービスを色々ご用意していました。
振込払いは銀行2行にゆうちょ銀で計3種、カード払いはPayPal、ヤマト運輸の代引きに、そして先述したNP社の後払い決済をどれでも自由に選んでご利用頂いておりました。
その中で言えば代引きと後払いの2つは、多種多様なトラブルの温床でありました。
受取拒否や住所相違、未成年者と親御様、モックを本物の間違われての購入、その他、本当に様々なトラブルがありましたので、売上拡大路線を止めてシンプルに低空飛行出来る方向へ路線修正をはかる際にこの2つの決済サービスの取扱をやめる事に致しました。
誤解を恐れずに申し上げれば、代引きと後払いを利用するお客様の「安易な気持ちでポチる」傾向が顕著に出ており、それが後々のトラブル発生の根本要因であるように思われます。
それこそ「友達がこれを欲しがってたから」という理由から友達の名前や住所で後払いでポチって、その友達の元に送られてきた商品や請求書を見て「何これ?」となる。そのような、普通の感覚では到底あり得ない事態が起きるのも後払いならでは、だという風に感じました。
ですから、警察に捕まる事案なのか民事上のトラブルか種別は色々あるでしょうけれども、この決済サービスのトラブルは多種多様に人々を悩ませ続けるでしょう、と私は考えております。
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犯罪を目論む人々へ好材料を与えてはなりませんから一応ここまで書くのを控えておりましたが、基本的に後払い決済システムを運営する会社は全く無関係の第三者が巻き込まれて代金請求されてしまった場合、その請求を取り下げ、「無かった事に」するパターンがほとんどであるようです。
ですから巻き込まれた第三者が金銭的な被害を被る事は今のところ無さそうですが、これまで清く正しく生きてこられた人々にとって、「支払わずに済む」というだけで果たして本当に気分が晴れるのか。その点は被害を受けられた方に対するもう少し丁寧なフォローを運営会社側が務めるべきではなかろうかと思っております。
我が国は「性善説」の国であります。
ありとあらゆる仕組みが性善説に則って機能しているわけですが、しかしその仕組み脅かすような、いわば「性善説という穴」を目を皿のようにして探し出し、見つけ次第徹底的に貪り尽くすかのような、そのような事案で溢れかえる昨今です。
廃線跡の電線が盗まれる。持続化給付金が不正受給される。無人販売所で餃子や野菜が盗まれる。フィッシング詐欺のメールが日に日に増える。
そのような「性善説という穴」が次々突破され、被害が増大しています。
もはや性善説は諦め、根本からガードを固めるべき時代に来ていると、私は思わずにはいられません。
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