モックセンター のブログ

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大半の消費者が回線と端末のセット販売を選んでいるのに、それでも分離を「健全な市場」と評する傲慢不遜な政策担当者

news.yahoo.co.jp


 この記事の中で紹介されている、政府の携帯電話市場改革に強く関与している北俊一氏のコメントに、私は強い違和感を覚えました。

北氏が考える“健全な市場”とは、総務省が「通信と端末の分離」と表現する販売形態を指す。誰でもハイエンドスマートフォンを持つのではなく、利用する用途に応じて適切な性能のスマートフォンを選ぶことになる。PC市場のように、端末(PC)と固定回線サービスを別々に購入するイメージが近いだろう。



 まず第一の懸念として、PC市場のように消費者に全てを委ねる方式を強制してしまえば、いままさに日本の多くのご家庭で起きているような、若者のPC離れのようなデジタルリテラシーの二極化がますます悪化するのでは?という点が挙げられます。


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 既にPCがそうなっているように、所得の少ない若い人々が積極的にハイエンド端末を選択する動機が無くなります。


 そうすると、特に今年に入り売上を伸ばしている超ロースペックの廉価端末ばかり持つようになり、メタバースのようなそれなりのスペックを要するリッチコンテンツやアプリに若者が手を伸ばせなくなります。


 そういった状況は単なる消費者問題で括れなくなってきて、そういった分野を目指す若者が減ったり、目指そうにも「売れない=食えない」職業と化してしまう事で、産業競争力であるとか、我が国経済全体の喫緊の問題となるのが自明であります。


 「なぜ日本にGAFAMのような会社が生まれないのか」などと仰るオジサマが非常に多く見受けられるわけですが、そうしたオジサマにも、政府がその根本原因となっている、こういった足元の問題にも目を向けて欲しいと思うわけです。


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 また、デジタルリテラシーの問題だけでなく、そもそも日本の大多数の消費者が回線と端末のセット販売を強く望んでいる現状から北俊一氏を始めとした政策担当者が目を背け続けている事も指摘しておかなければなりません。


 日本の携帯電話市場は全ての販売チャネルで回線と端末のセット販売を強制しているわけではなく、それこそここ10年近くに渡ってあちこちでシムフリー端末の販売が行われています。


 台湾のASUSが「Zenfone」シリーズで一躍有名になったのが2016年で、それらのシムフリー端末の事を「格安スマホ」と呼び、取り扱いを始める家電量販店が急速に増えていったのを記憶しておりますが、その後の進捗がどうであったかは、皆様よくご存知の通りであります。


 当初「格安SIM」と呼ばれたMVNO各社も最初の頃はSIMカードのみの単体販売を強く推してみたものの、それでは消費者の理解が得られなかった為、結局は先述したZenfoneや富士通のarrows M03、ファーウェイのP10Liteなどの比較的安価なシムフリー端末をわざわざセット販売という体裁を整える格好に再修正して、それでようやく消費者に目を向けてもらえるようになった経緯があります。


 このように、販売する側にしても端末と回線の分離を自助努力で伸ばそうと試みた時期がそれなりにあって、しかしその上で大半の消費者がセット販売を強く望み続けたから今日の市場の有り様が形成されていったわけでして、それでもなお分離販売こそが健全だと言い切るその姿勢こそ、ごく一部の急進的なオタクの人達に見られる悪しき独善性では無いでしょうか。



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 政府や総務省国民の選択を無視して端末と回線の分離販売を強引に推し進め続けた結果、日本のスマートフォンの売上ランキング上位10機種は、ほぼ全て中国製の製品となってしまいました。


 アメリカ国籍のiPhoneにしても作っているのは中国ですし、近頃ソニーやシャープやFCNTが売り出している市場価格2万円前後のスマートフォンも、日本企業のロゴマークはついているものの、やはり中国製であります。

 これは要するに、雇用や部品生産などの経済的利益をみすみす中国に譲り渡してしまっているわけであります。

 この由々しき現状を、果たして日本の総務省はどのように受け止めるのでしょうか。


 携帯電話以外にも実に様々な分野において、製造の雇用を奪い、そしてこれから販売の雇用も奪い、OECD加盟国最低の賃金水準となった我が国は、政府自らそのように仕向けているのではないかと、強く非難しておきたいと思います。


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