少し前に京セラが民生用の携帯電話製造から撤退すると発表されました。これで純粋な意味で日本の携帯電話メーカーと呼べるのはソニーとFCNT(旧富士通)の2社になってしまいました。
若い方からすれば、自分の意志でどのスマホにしようか選べるようになった頃には既に片手で数えられるくらいしか日本メーカーが存在しない状況になっていたでしょうからいまいちピンと来ないかもしれませんが、実は日本には数十もの製造メーカーが存在した時代がありました。
パナソニックやNECや三菱電機や日立製作所や東芝といった大企業もあれば、日本無線やデンソーや国際電気といった民生用(一般消費者向け)製品のイメージがまるで湧かない企業まで、実に百花繚乱というか群雄割拠というか、本当にバリエーションが豊かでした。
今日はそういった中でも、特に激レアで携帯電話マニアですら「え?」と驚くような、そういうメーカーの製品を3つご紹介いたします。
■ユニデン
現在はドライブレコーダーや船舶用無線機などの製造を行っているユニデンが1996年にNTTパーソナル向けにリリースしたのがこの製品です。
今から30年近く前の製品ですから大きいのは当たり前みたいな印象を持つ方もいるかもしれませんが、実際にはこの時代の製品は既に小型化が進んで80グラムを切るものが中心でしたし、機能面もパイオニアがタッチパネル方式の製品を出したりしていましたので、この時代によくこんな大きくてローテクなものを出したものだなと、妙に感心してしまう気持ちすら出てきます。
当時主流だった普通のPDC型携帯電話と比べて端末の構造が単純で参入が容易だったPHSだったので参入してみたのでしょうが、残念ながら後が続きませんでした。
明治14年創業の超老舗通信機器メーカーの沖電気が1994年頃にリリースした第1世代のTACS方式携帯電話です。
沖電気は元々電電公社と付き合いの深い、いわゆる「電電ファミリー」と呼ばれる企業の一つなので携帯電話の製造を担う事に特に違和感は無いのですが、NTTが採用しなかったTACS方式の製品を作っている点は少し不思議な感じも致します。
その後は第2世代のデジタル化した携帯電話には参加していないものと思います。
■シチズン
厳密に言えばこれは携帯電話ではなく、ドコモのデジタルムーバに接続して使用するPDAのような端末です。
これの意外な点は、まだiモードすら存在しなかった時代にEメールの送受信をモバイルで、それもこんな小さな端末で可能にしたという所です。そもそも時計メーカーのイメージしか無いシチズンがこういった製品を作っていた事自体が珍しいと考え、言及しておきたく思います。
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現在の世界のモバイルインターネットのだいたいの部分は日本の会社がその足がかりになるものを作っておりまして、しかしながらそれを当の日本人が過小評価して活用を十分に行ってこなかった結果として、とうとう2社だけになってしまったというのが、実にもどかしい所であります。
当時を知らない若い皆さんに、ぜひ昔の日本の携帯業界は凄かったんだという事を知ってもらいたいと私は考えます。
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