モックセンター のブログ

携帯電話スマートフォンのモックアップを販売しているモックセンターの中の人のブログです。中の人はTVチャンピオンケータイ通選手権の出場者でもあります。最低週に1度は更新したいと思います。弊社の業務に関するお問合わせは弊社ホームページのお問い合わせフォームや電話窓口にお寄せ下さい。

携帯電話産業の凋落とともに歩んで創業13周年

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 多くのお客様やお取引先携帯電話関連産業のお支えのおかげで、弊社平間通信株式会社は2008年5月1日の創業から13周年を迎える事が出来ました。

 毎年のように、いや歳を重ねるごとにより一層、皆々様への感謝の思いが増してまいります。
 こういった言葉は社交辞令として語られるものも少なくありませんが、私はただシンプルに、本音としてありがたい気持ちを噛み締めております。


 また、私は携帯電話関連産業と、携帯電話を愛する皆様によって支えられているという自負があります。


 だからこそ、とてつもない逆風にさらされてボロボロになってしまったこんにちの携帯電話関連産業について、私が比較的自由にモノを言える立場だからこそ、この鬱積した気持ちを率直に語ってまいりたいと思います。



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 先日バズっていたこの記事を読んで、とても辛い気持ちになりました。


gadget-touch.info
 


 一般的な販路で販売されているシムフリー商品よりも家電量販店のauコーナーで販売されているものの方が13.000円安いので、そこで回線契約をせずに買おうとした所、断られてしまった。
 しかしそこで著者さんがお店の方に対し、総務省の通達や各種法令では回線契約せずにスマホを単体で販売する事を拒否するのは許されないという趣旨の主張をされ、それによって回線契約をせずにスマホを安く購入する事が出来た。

 といった一連のやり取りを表したものでありました。


 各種法令や通達で定められている以上、この著者さんの行動には何らの瑕疵が無いどころか、家電量販店の対応にむしろ問題があるのが明らかであります。


 そういった点を前提として私なりに申し上げるならば、記事中で繰り返し指摘されている

こうした販売拒否の背景には販売代理店に対するキャリアからの厳しいノルマや、そもそも端末の卸値が原価ギリギリになっていて単体販売では利益が出ないという複雑な事情が絡んでいるのですが、法的には買えるのに買えないのは中々もどかしいですよね。


 この売り方では利益が出ないという一点についてであります。


 元より菅総理は契約インセンティブの仕組みを問題視しています。それに加えて端末販売でも利益を出せないとあっては、携帯販売の仕事では利益を稼ぐことが出来なくなります。



 家電量販店の従業員さんの所得が非常に低い事は今更言うまでもありません。


 その非常に低い所得の財源である利益を得る機会を、ここぞとばかりに奪ってしまう事が合法であり、国が推進しているという恐ろしい現実がここにあります。


 ですから恐らく、こんな事があちらこちらで繰り返されるならば、家電量販店は携帯電話キャリアの販売代理店業務を辞めざるを得なくなるのは自明であります。


 ただでさえ薄利多売で厳しい中で頑張っているのに、国からタダ働きを強要される事業を続けられる筈が無いからです。


 もちろんこれは家電量販店に限った事ではありません。キャリアショップも併売店も全く同じルールの中で商売をしている以上、続けられなくなると考えるほうが自然であります。


 
 そんなこんなで、「携帯屋さん」と呼ばれるようなリアル店舗は、少なくとも日本では大幅に減少していくだろうという風に予想しておりまして、また、それは同時に弊社の存亡の危機でもあるわけで、非常に暗い気持ちに苛まれているというわけであります。



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 私が一介の携帯屋店員だった2000年代は、携帯電話業界や、その周辺にある産業がとても活気に満ち溢れておりました。


 携帯電話を買うのに新規契約で0円とか機種変更で1万円とかが当たり前で、携帯を買って10ヶ月後には再び機種変更の優遇措置が図られるので、またすぐに買い替えができるようになっているのが当たり前の世界です。


 そうやってみんなが気軽に買い替えができるから、端末が売れて、お店もキャリアもメーカーも潤いましたし、皆が競い合うようにして新サービスを出したり新機能を取り入れたりしました。


 日本のリチウム電池メーカーが強いのは、日本の携帯電話はバッテリーをたくさん食う機能、例えば高精細液晶や着メロ着うたにカメラなどが色々と備わっているから、ではより一層能力の高いバッテリーが必要だと技術革新が進んだのです。

 かつて日本に液晶メーカーが4つも5つもあった理由もそこにありました。

 携帯が様々な需要を生み出し、経済を回しました。

 生産はほぼ全て日本国内で行われ、地方の各地に新たな雇用を創出しました。



 
 しかしその幸せな時間も、1人の大臣のたった1年弱の任期の中で突如行われた新たな規制により、脆くも崩れ去りました。


 携帯電話のインセンティブ販売を規制し、高額販売を義務付けるものでした。


 それによって販売数は前年比の半分にまで急減。

 メーカーの撤退が相次ぎ、製造した部品の売り先を失った液晶メーカーの後始末を巨額の税金を投じて救済しなければならない事態を招きました。それがジャパンディスプレイです。


 折り悪くリーマンショックが重なった為、撤退したメーカーの工場で働く人々が大勢路頭に迷いました。


 端末の販売価格が急騰した事から分割払いによる販売が多くを占めるように変化し、利用者の支出額も増えました。


 端末の販売が急減し、携帯キャリアのARPUの伸び悩み傾向が始まりました。その穴を埋めるべく、各社は有料コンテンツの販売を強化し、端末販売時に有料コンテンツの契約を義務付ける携帯販売店が相次ぎました。


 家電量販店や併売店と違って取り扱える業務が限られるキャリアショップは悲惨の一言です。従業員の給料はドンドン下がり、非正規雇用の活用が拡大しました。
 それでも減収を補えないと、今度はSDカードなどのサプライ品に高い値段をつけて分割払いで販売したり、「オマケです」と嘘をついて回線契約つきのデジタルフォトフレームを売ったりと何でもありの有様で、知識の少ない消費者が次々と餌食になりました。


 かつて日本の端末メーカーで売上TOP3を占めたNECはスマホガラケーも作るのを辞め、パナソニックは拠点を米国に移し、シャープは経営危機に陥って台湾鴻海の傘下に収まりました。


 日本の携帯電話産業は焦土と化しました。



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 弊社はこれからのSDGsの時代を見据え、2017年から始めた植木農業を生きる術と位置づけて、生き残りを図っていく決意であります。


 もはや携帯電話で飯を食える時代ではなくなってしまいましたので、非常に残念ではありますが、日本の携帯電話産業の再興などは諦めて、立派な植木をたくさん育て、山梨の若者をなるべく高い給料で雇い、持続可能な世の中を作る一助となりたいと、決意を新たに致しました。


 携帯電話のモック販売はもちろん続けていきますが、国内の仕入れ網がズタズタに近い状態になってしまいましたので、新しい製品を潤沢に供給していくといった目標のラインはだいぶ低く設定して行かざるを得ず、むしろ一刻も早い植木農業のマネタイズに心血を注いでいきたいという状況であります。


 とてもとても心苦しい現状ですが、なんとか生き残って、明るい未来を作ってまいりたいと思います。



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