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ネット上で話題になっていたこの東海エリアの交通事故映像について、色々考えさせられました。
私が特に気になったのが、この事故の遠因となったトラック(キャリアカー)の所作について、ネット上で手厳しい意見を寄せている人が思いの外多いという点であります。
この事故現場は高速道路の合流地点です。
トラック(キャリアカー)が本線に合流しようとした所へ、後方からミニバンが走ってきてトラックに追突しそうになり、慌てて隣の車線へ車線変更し、その車線を走っていたバイクに追突したという流れです。
そして、そのトラック(キャリアカー)に対する厳しい意見というのは、合流地点は本線を走行している車が優先という規則なのだから、トラック(キャリアカー)はミニバンを先へ行かせるべきだった。それを無理に合流したのが事故の原因だ、とするものです。
「合流地点は本線を走行している車が優先」というのは実際交通規則にそう書かれている正論なのでしょうが、しかし急加速も急減速も出来ないトラックにあの場面でその正論を当てはめる事が現実的で無いのも、多くのドライバーがよくご存知なのではないでしょうか。
ですから私は、この事故のような状況であればミニバンが速度を落としてトラックが合流しやすいようにお付き合いして差し上げるべきだったと考えますし、私自身普段から常にそのように致しております。
物理的に急加速急減速が不可能なトラックを80キロや100キロで走っている本線走行車の合間を縫って合流させようというのは、どうしようもない不条理です。どう転んでも無理するしか無いという現状です。
それにどうやって折り合いをつけるのか?を考えなければならないわけでして、そこで杓子定規に「本線走行車が優先」を当てはめようとするのは、それこそ机上の空論であります。
みんなが正論をぶつけ合うばかりで現実的な着地点を見出そうとしないのであれば、それこそ急加速急減速の出来ないトラックを日本中から排除するしか無いという、悲劇的で誰も得をしない結論に行き着いてしまうのではないでしょうか。
私はトラックを公共インフラの一種だと考えています。私の暮らしに欠かせない存在だと重視しています。だからこそ、利害関係者でも無いのに、トラックを取り巻く環境を憂いています。
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昨年6月に起きた飲酒運転のトラックによる死傷事故について裁判が行われました。
事故が起きる前から会社も取引先もこのドライバーが常習的に飲酒運転している事に気付いていながら、そのままハンドルを握らせ続けていた事がわかりました。
論外だと思います。
普通の職場でこのような状態の従業員がいれば、働かせ続ける事などまず考えられないと思います。
しかしながら、なぜ会社や取引先は飲酒運転の常習者にそのままトラックを運転させ続けたのかと言えば、極度の人手不足で飲酒運転の常習者を辞めさせる余裕すら無かったからであります。
トラック運転手の労働環境があまりに悪過ぎるせいで、人が集まらないのです。
規模の小さな運送会社はどこも似たり寄ったりではないでしょうか。
飲酒運転の常習者をそのまま働かせ続ける運送会社は小企業と言えどもそこまで多くは無いでしょうが、ゼロでも無いでしょう。
この問題の根本部分である労働環境の問題がそのまま留め置かれている以上、また新たな被害者、犠牲者が少なからず出てしまうだろうと私は思います。
極度の財政難で保障能力がほとんど無いトラックに轢かれるか、保険が降りない飲酒運転のトラックに轢かれるか、それとも運良く財政力の高いトラックに轢かれるか。
そういう時代に我々は生きています。
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トラックのドライバーが小休憩する為に駐車できる場所は、都会であればあるほど少なくなります。
こちら山梨のように大きめのトラックでも対応できる大規模駐車場完備のコンビニエンスストアがふんだんに存在する地域はマシですが、東京の山手線の内側でトラックを小休憩させる場所を見つけるなど、それこそ河原で砂金を見つけるがごとき難しさです。
ですから都会のトラックドライバーは、それこそトイレに行くといった基本的人権すら得られないのが実情であります。
道端に妙な色の液体が入ったペットボトルが捨てられているのを見た事のある人もいると思います。
それが何なのか、容易に想像できると思います。
そんな場所で誰が働きたいと思うでしょうか。
ですから私は、そう遠くない時期に都会にモノを運ぶトラックが激減するのでは無いだろうか、と想像しています。
トラックのドライバーにも職業選択の自由がありますから、「トイレに行ける職場」と「トイレに行けない職場」のうちから仕事を探すなら、普通はトイレに行ける方を選びます。
世の中は飲酒運転の常習者ですら雇ってしまうくらい、トラックドライバー不足なのです。
ですから近年はこういう話まで出てきています。
トイレに行けない労働環境を改善するのではなく、外国から働いてくれる人を呼ぼうとしているのです。
円安で実質賃金が大幅に目減りするのが確実な我が国で、わざわざトイレに行けない仕事に就きたいと来日して下さる徳の高い人が一体どれほどいるのでしょうか。
こういった現状ですから、都市部で物流が目詰まりを起こして存亡危機事態になるという近未来も、あり得るのではないでしょうか。
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私はトラックドライバー人手不足問題への即効性の見込める対応策の一つとして、大型車の高速無償化をご提案申し上げたいと思います。
コスト削減の為に高速道路の通行料を渋って一般道を走っているトラックがどれほど多いのか、甲州街道沿いに住んでみて、身にしみて実感しました。
ですから、高速で2時間の距離を一般道で4時間かけて運んでいるという不毛なトラックドライバーの働き方を是正するべく、高速無償化するのです。
それによって労働環境が改善するのは言うまでもありませんし、所要時間を短縮させる事でドライバー1人が運べる荷物の量を増やす事も可能です。
副次的なメリットとしてはトラックの燃費が改善されて燃料消費削減による貿易赤字の削減、地球温暖化ガスの排出削減、一般道の路面損耗防止(長寿命化)なども見込めます。
その他、大型の物流センターやショッピングセンターにトラック専用の駐車場と休憩スペースの設置を義務付ける事や、高速道路のサービスエリアの大型車駐車マス大幅増など、1年もあれば実現可能な対応策は色々とあるのではないかと考えております。
これくらいの事をやらなければ早晩、都市部が存亡危機事態に陥るのだという切迫感を持つとともに、世の中がトラックドライバーにもう少し優しくしてくれるよう、私は訴えたいと思います。
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