テレビを見ておりましたらば、NHKも民放もこの話題で持ちきりでありました。
土曜日曜の各社の報道内容を一通り見ておりましたが、通信障害で困っている人々の街頭インタビューが非常に多く流され、番組を見ることによって得られた情報は「auで通信障害が起きて大勢の人が困ってます」という、あまり有益とはいえないものが殆どでありました。
これが例えば他の公共インフラで障害が起きた場合であれば、電車が止まれば振替輸送のお知らせをしたり過去の事例に触れたりしますし、高速道路が通行止めになれば迂回ルートの案内をしたりする等の、要するに各々の被害を最小限に留めるための代替手段の提案があるのが自然なのと比べると、今回の事案においてテレビ局各局の対応力や提案力、要するに公共メディアとしての底力が著しく低下している事が痛感させられました。
そして、今回のテレビ局各局の体たらくによって問題となったのが、中高年を中心としたいわゆる「情報弱者」と呼ばれる人々でありまして、テレビを見てもこれといった情報が得られないがために、酷暑の中わざわざauショップに駆け込む中高年が全国で大勢おられた、という事態であります。
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さらに今後新たな火種になりかねないのがこの論点です。
www3.nhk.or.jp
news.tv-asahi.co.jp
テレビ局や新聞社がやたらと補償を煽っている点です。
これにより補償に対する世間の期待感が高まりつつあるわけですが、各社の煽りによっていたずらに膨れ上がった期待感を満たせるような補償など望める筈もありません。
社のイメージアップの為に大盤振る舞いなどしようものなら、それが相場とか悪しき前例となって、後々に障害を起こした場合に同業他社も含めた足かせになるのが間違いないわけでして、ですから最大限期待できる範囲として基本料金を日割りで相殺するか、auポイント1000円分とか、その程度にしかならないものと考えられます。
果たして、テレビ新聞各社が「補償は!」と煽ってノリノリになってしまったauユーザーはそれで納得するでしょうか。
つい先日楽天モバイルに叩きつけられたような憎悪感情の矛先が今度はKDDIに向かうようになって、またしばらく世間がザワザワするような、そこまで想像しておかなければならないと、私は考えております。
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携帯電話のネットワーク管理という業務は非常に高度で、しかも担い手はそれほど多くありません。
まして日本の携帯電話ネットワークは他国のそれと比べて堅固性や接続安定性のクオリティが非常に高いものがあるわけですが、そういった高い技術や能力の割に技術者の報酬が普通のサラリーマンと代わり映えが無いというのが現状であります。
ですから今後はこういったネットワーク管理の技術者の皆様が、経済先進国や新興国の通信キャリアや設備メーカーからスカウティングされて海外へ羽ばたいて行かれるようになる事も、少なからず起きるだろうと私は想像しています。
ただでさえ我が国の携帯電話キャリアは官製値下げの影響で収益性が悪化し、今後も改善どころか現状維持すら危ぶまれる微妙な見通しにあります。
能力の高さに比して給料が高くない技術者が海外へ羽ばたいて行かれる事例は過去に半導体や液晶やリチウム電池や、その他非常に多くの業界で散々見てきたわけでありまして、ですから日本の携帯電話ネットワークもボチボチそういう時代を迎えるに違いありません。
それこそかつての横浜ベイスターズの暗黒時代のように、中心選手が次々とFA流出してしまって気付いたら4番が中村紀洋さんになってました、みたいな時代がすぐそこまで迫っていると言いたいのであります。
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要するに私は、今後の日本の携帯業界は暗黒時代を迎えるに違いないという風に思っております。
そしてそういった時代への備えとして、複数キャリアを当たり前に契約する事を推奨していきたいと思います。
なぜか日本の携帯キャリアが販売する端末にはこのDSDVに対応しないものばかり、いや、わざとDSDVを削除するようなセコいローカライズを施すものばかりであり、なぜかそれを総務省も見て見ぬふりを続けている現状があるわけですが、今後は家電量販店や、今は数少なくなってしまった併売店などでこういったものを「リスク管理」としてお客様にアピールして、商機へと繋げていって欲しいものだと考えております。
KDDIの通信障害で困った方も多くおられるとは存じますが、業界関係各位におかれましては「転んでもただでは起きない」精神で、ひとつ業界盛り上げに取り組んでいってほしいものであると結んでおきたいと思います。
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