携帯電話キャリア各社が前のめりになって金融サービスの推進を行っております。
携帯電話キャリアが本業で利益を上げるのを総務省が阻止しようとし始めてから十数年が経ちます。
民間企業として、もういい加減携帯電話事業で利益を上げるのを諦めて別業種に収益源を見出さなければならない事情が背景にあります。
しかしだからといって、レッドオーシャンの臭いがぷんぷんする金融事業に取り組むというのは、いくらなんでも筋が悪いと私は考えます。
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日本人は貯金が好きで投資が嫌いだから、預貯金が非常に多い。
これを投資に持っていきたい。
これが岸田政権の目玉政策の一つだから、携帯キャリアもそこの波に乗ってひと稼ぎしたいというのは流れとしてわかるのですが、「投資が嫌い」な人達に投資をさせようとするというのは、ヴィーガンの人に肉を食べさせようとするのにも似た、ものすごくハードなチャレンジだと自覚するべきですし、ハードなチャレンジだからこそ常にトラブルの山なのだという自覚も持つべきだと思います。
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これだけ難易度の高い商材を携帯電話キャリアが推進していく場合、誰が窓口となって営業活動を実施するのかと言えば、それは代理店が運営するキャリアショップという事になります。
それこそ有料オプションや有料コンテンツの契約を無理くり獲得して売上増を目指してきた代理店運営のキャリアショップに、ただでさえトラブルの多い金融商材を委ねて、本当に大丈夫なのかという懸念が非常に強いと考えます。
今はキャリアショップで働いてもあまり良い給料が貰えないという事で各社とも人手を確保するのに四苦八苦していると聞きますが、そこへさらにキツい仕事を加えたりすればいよいよ人材流出に歯止めがかからなくなって、キャリアショップの運営そのものが成り立たなくなる恐れも大いにありうると思います。
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20年前の携帯電話業界と今とで明らかに違うのは、今は真面目な人ばかりになってしまったという所です。
20年前は、あのNTTドコモに夏野剛さんが乗り込んでいって好き勝手にやっていたり、Jフォン東海の重役にロン毛のチャラ男がいたり、「遊び心」という面においては非常に高くて、フリーダムでありました。
あれだけ反対意見の多かったカメラ付き携帯や絵文字メールでグイグイ行けたのも、あのフリーダムな業界の気風があってこそでありました。
しかし今では、ほとんどシャレの通じない生真面目一辺倒な堅苦しい業界になってしまいました。
出てくる話題は端末値引き規制とか通信品質とか金融サービスとか、面白くもなんとも無いものばかりであります。
真面目な事は決して悪いものではありませんが、基本的に真面目であればあるほど経済は停滞し、出生率も下がるわけで、マクロ的に見ればあんまり喜ばしいとも言えない状況です。
ですので私としては、もう少しはっちゃけた面白いものを作っていこうという気風を業界に求めていきたいと、そんな風に思ったりもしている所であります。
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