NTTの完全民営化について、NTTとそれ以外の通信キャリアの間で激しい攻防が続いています。政府与党でも賛成陣営と反対陣営で様々な動きがあるというニュースも出ています。
この件について先に私の意見を申し上げますと、これはもう明確に反対であります。100%のNOを突きつけたいと考えております。
NTTの完全民営化はNTT法廃止によってもたらされますので、NTT法廃止に反対という意味で受け取って頂ければ幸いです。
本件の詳細な経緯は既に様々なメディアで報じられていますからそちらへ譲るとして、私がこの度特に申し上げておきたいのが、いかにNTTが信用出来ない会社であるかという所でございます。
その信用できない会社に我が国の基幹通信網のほとんどを握らせるというのは、極めて危険です。だから反対というわけです。
■
NTTグループはかねてより、国民全体に影響を及ぼすような重大な課題を水面下で隠れて決定し、「決定したから国民は全て従え!」というスタンスで物事を動かしてまいりました。
例えば電電公社時代から長年に渡って「資産」として国民に購入を強制してきた加入権を2005年に唐突にチャラにした件があります。
固定電話を1本引くのに最大で8万円、2005年時点で7.2万円差し出して加入権を得る事が必要なものの、電話が必要なくなれば解約してその権利を金券ショップや質屋に売る事も出来ました。国税庁はこれを資産として認めていたため、企業はこの本数分だけ購入して資産として積み上げていたのですが、これが一夜にしてパーになったのです。
こちらの記事(※)にも記述のあるドコモの子会社化も唐突でした。
高橋社長は、01年の閣議決定でNTTのドコモ株保有比率を低下させる方針が示されたとした上で「時代が変わったといって(政府の)審議会で議論されることなく、ドコモを子会社にしてしまった」と指摘。
※ソフトバンク社長「ずっと嫌いなポジションになる」…NTT法見直しで深まる対立
newswitch.jp
2001年から第二次安倍政権までNTTに対して「もっとドコモ株を売れ!」と閣議決定で言い続けてきたのが、2020年9月16日の菅内閣成立からわずか半月足らず(2020年9月29日発表)でドコモ子会社化の話が降って湧いて、そして本当に実現してしまったわけです。
この短い間に公の議論が行われている筈がないのは明らかで、KDDIの高橋社長もその点を指摘しています。
ブロードバンドの黎明期にはADSLの導入を巡って公然と違法行為を犯して通信会社の東京めたりっく通信を経営破綻に追い込み、我が国のブロードバンド普及が他の先進国から遅れを取る要因になりました。
「事故を起こした」とか「小さな不祥事が多い」という理由で信用出来ないというのではなく、国民全体にとって重大な事柄を隠れて決めて国民全体に押し付けてくるのが常という社風のNTTに、道路や水道に肩を並べるような公共インフラを一手に握らせるというのは、おおよそ考えられない危機的事態であります。
それこそ某大国に港の99年租借権を譲渡するかのような暴挙と言っても過言では有りません。
■
NTTが握っているインフラというのは、通信会社各社が俎上に載せている光ファイバーもそうですし、その光ファイバーを通すための配管や地下トンネル、局舎も含まれます。
元NTT社員です。
— 藤堂修@チャレンジ 挑戦をあきらめない生き方(きずな出版) 著者 (@osamutodo) 2023年11月17日
光ファイバーは民営化後に敷設したかもしれませんが、光ファイバーを敷設するための配管はNTTが保有していたりします。
配管が物理的に追加しにくい場所の場合、先に敷設した光ファイバーを借り受けるしかなかったりします。
(1本のケーブルで何本も光ファイバーが束ねてある)…
これはつまり道路で言えば公道のようなものです。
日本の道路はごく一部の私道を除く大多数が公道です。高速道路も民営化されたとはいえ依然として道路の所有者が国のままで、運営をネクスコ各社が担っているに過ぎません。
この日本の高速道路のように所有と運営を分ける事を上下分離方式と言いますが、NTTの持つ配管や局舎についても高速道路の場合と同じように上下分離方式とするべきではないかと私は考えます。
道路や通信と同じく元国営の公共インフラで上下分離方式を取らなかったのが国鉄→JRですが、いわゆる三島会社と呼ばれるJR北海道、四国、九州が経営に苦しんでおります。廃線されてしまった路線も少なくありません。
NTTもインフラと運用の上下分離方式を取らなければ、早晩北海道のようにものすごい勢いで廃線されて原型を留めない有様になる可能性は非常に高いです。北海道の道東など10年も持たずに切り捨てられるでしょう。
元々NTTは地方を軽視してきた歴史的経緯があります。
沖縄には沖縄セルラー電話という携帯電話キャリアがあってauブランドで運営され今も昔も非常に市場シェアが高いのですが、この会社はNTTが沖縄の携帯インフラ整備を怠り続けた事から、地元財界が我慢の限界を超えて自分達で携帯電話キャリアを立ち上げたという歴史があるわけです。
このNTTの基本的価値観は今でも変わっておらず、ドコモ子会社化の後に始まったドコモショップのリストラで地方のショップが次々と閉鎖の憂き目にあっています。
だからこそやはり、通信インフラの上下分離方式はNTT完全民営化の有無を別に、これから必ずやっていかなければならないと私は考えています。
■
この問題はテレビ局は積極的に首を突っ込みたがらないだろうと思います。
テレビ局の所轄官庁と携帯電話の所轄官庁が同じだからです。せいぜい「ほとんど触れないでおく」ので精一杯でしょう。
そのせいもあってか、世間のこの問題への関心は低く、仮に少し関心を持ったとしてもただの喧嘩のような印象を持っている人も多いようです。
ですが、いまや通信に無縁な人は我が国には居ないと思います。
地方が切り捨てられて、それで始めて物事の重大さに気付いても遅いのです。全国各地で電車が廃線になったり路線バスの路線が廃止になった後になって悲鳴を上げている人が多いわけですが、それの二の舞いになってはならないと思います。
ですから皆様、どうかSNS等ではっきりとNTT完全民営化に反対の声を上げて欲しいと思います。
どうか宜しくお願い致します。
.