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1月に千葉県内のドコモショップで発生したトラブルが記憶に新しい所ですが、今度は東洋経済のウェブサイトで掲載されたソフトバンクショップに関する記事が話題を集めています。
さらに東洋経済の記事と同じ日に、偶然ではあるでしょうが、やはりキャリアショップにまつわるこちらの記事もヤフートップで取り上げられました。
これらの問題をあくまで販売代理店の問題であると片付けたがる向きもあるようですが、これはれっきとしたキャリア主導によって生じる問題です。
よって「携帯ショップの収益が~」などと問題を矮小化したり論点をそらしたりしても何の解決にも繋がりません。
また、1月のドコモショップのニュースではオプションベタ付けについての議論もテレビ番組で成されていましたけれども、今回はソフトバンクショップにおけるオプションや高額料金プランの過剰な勧誘の背景にあるものをつまびらかにしておりまして、この事からも各社似たり寄ったりな現状があるのを示しているのではないでしょうか。
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キャリアショップでお客様のニーズに相反する、不適切と思われても仕方がないような営業が行われるようになって、はや10年は経とうとしています。
今から10年くらい前は携帯各社が純増数を激しく争っていた為、数字を上げるために回線契約のついたデジタルフォトフレームやタブレット端末を「プレゼント」や「オマケ」と偽って販売する事がまかり通っておりまして、それに関連して消費生活センターに苦情が殺到し、センターからたびたび注意喚起が発せられる事態となりました。
しかしながら、日頃から消費生活センターの注意喚起に耳を傾けている人などそうそうおりませんし、テレビも新聞もそれを取り上げる事もありませんでしたので、やがてうやむやのまま風化し、こんにちへ至っております。
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このように消費者トラブルの発生源的状況が10年経っても依然として収まらないどころか、むしろ「キャリアショップは信頼できる」という印象を持ち、キャリアショップに足を運ぶお客さんが増加傾向にあるように見えなくもありません。
そして、こういった状況にあるからこそ、携帯キャリア各社は危機感を持つどころか、むしろ圧迫を強める一方でありますので、そろそろ消費者の皆様方も気付いてくれたら宜しいのでは?と、私は考えております。
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携帯キャリア3社はいずれも上場企業ですので、今期や来期、さらにその先と、延々と収益増を目指し続ける必要があります。
ですから各社とも収益を増やす為の努力をしているわけですが、いかんせん発想に乏しく、いつも3社横並びで同じような事を始めて大した収益増に繋がらない悪循環を続けています。
最近ではこのようなニュースが有りました。
ドコモがd払いでソフトバンクがペイペイで、それぞれキャッシュレス決済サービスを打ち出しています。
端末や料金プランの横並びで既にウンザリさせられているというのに、こんな所まで横並びで、結局ペイペイの真似をして自腹を切って還元キャンペーンを実施して、収益を増やしたいのか横並びで同じことをやりたいだけなのか、目的意識の逸脱が疑われかねません。
キャリアは収益増を図りたくとも、お客さんがお金を追加で払ってでも使いたいと思えるような商品やサービスを打ち出せないのです。
そのしわ寄せが、キャリアショップをはじめとする販売店に対する圧力として現れているのです。
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このような状況を改善するには、一体どうしたら良いでしょうか。
キャリア自ら綱紀粛正をはかり不適切販売の撲滅を目指すようになってくれるのが最も良いのですが、この10年あまりの状況を比較的近い場所から眺め続けてきた感想としては、そういった期待は全く持てないという風に考えております。
スルガ銀行やかんぽ生命のように大きなトラブルになってようやく重い腰を上げる流れになるのを期待するにも、金融商品ほど明確な規制法が無く、罰則規定もありません。
ですからそのような流れで改善していくという期待も持てません。
ですから私は、キャリアショップの未来は暗いと考えています。
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もう既に起こっている事態ですが、キャリアショップで働いてくれる人が見つかりにくくなっています。
それは仕事の大変さの割に給料が安いと、徐々にではあるものの知れ渡り始めているからです。
仕事が大変で給料が安くとも、介護士さんや保育士さんのようにとても世の中から必要とされていて意義深い仕事なら、なり手はいるでしょう。
しかしキャリアショップの仕事が現状そうであるとは、とても言えません。
ですからなり手がどんどんいなくなって、それこそ数年前のすき家のように店を開けたくても開けられない状況に追い込まれるようになる日も、そう遠くない時期に来るのではと、私は思います。
そしてそうなった暁には、人的リソースに依存する割合の極めて大きいキャリアショップの運営をどのように維持していくのか。大変な懸案だと思われませんでしょうか。
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1990年代から2000年代にかけての我が国の携帯電話業界はまばゆいばかりの光を放ち続けておりましたが、それが2010年代に入ると急転直下、とにかくありとあらゆる部分が急激にシュリンクして、端的に言ってしまえば、不幸になっています。
キャリアにある程度の資金力がある今のうちに色々とやるべき事があるのではないかと、私は申し上げたいと思います。
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