モックセンター のブログ

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携帯ショップの現場で一体何が起きているのか

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 大手総合商社の兼松さんが運営している千葉県内のドコモショップにおいてシビアアクシデントが発生致しました。


k-tai.watch.impress.co.jp



 世の中的には大きな驚きを持って受け止められ、そして炎上へと至ったわけですが、私としましては特に驚くべき事とは考えておらず、近年の携帯ショップ界隈で水面下で起きている諸問題の一端が表出したに過ぎない、という程度の感想を持ちました。


 私の考えを先に結論から申し上げれば、これは構造問題であって、恐らく同種の騒動はこれからも少しづつ繰り返されるだろうと予想しております。



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 まず今回の件をおさらいします。


(1)来店したお客様の接客にあたる従業員に対し、上司がメモ書きを通して指示を出しました。

→その指示の内容は、お客様からオプション契約を獲得せよという趣旨で、オプション契約を獲得する上での心積もりや、お客様の背後関係に関してお客様を愚弄する文言を使って説明していたというものでした。


(2)そのような指示の出し方そのものが非常に不適切であるものの、そのメモ書きをあろうことか誤ってお客様に手渡してしまい事態が露呈致しました。

(3)そのメモ書きを目の当たりにしたお客様は当然ご立腹されお店に対し苦情を申し立てるも。。。

→本来ただちになされるべき謝罪が充分行われず、ついに世間様に知られる事態にまで状況を悪化させてしまった、というものであります。



 今回の問題の中で要点が3つあると私は考えておりまして、その3つとは上記の3項目となるわけですが、それぞれについて私なりの意見を述べていきたいと思います。


(1)について


 なぜこのような汚い言葉を使って指示を出さなければならないのか?という事を考えなければなりません。

 この理由は2つ想像され、単純にこのメモ書きを書いた上司のキャラクターなのか、もしくは、このような汚い言葉を使わないと短時間に意味を理解できない従業員なのかの2つの可能性が考えられます。

 兼松さんのドコモショップの場合、恐らく店長や幹部スタッフクラスが契約社員で、その他のスタッフはアルバイト雇用されている可能性が高いと考えます。
 そして、これらの雇用形態で働く人々が出世や昇給で期待できる伸びしろは非常に限られており、それゆえ「頑張ってオプションを取ろう!」と本気で取り組んでくれるかどうかは、なかなか難しい所があります。
 頑張っても給料が増えたり兼松さんの正規雇用にしてもらえる可能性が低いならば、そんなに無理してオプションを取りにいこうとしない、そういう従業員サイドの心理が働くのではないでしょうか。

 だから上司はなんとか従業員に前向きにオプションを取りに行かせようとするあまりに、ああいった汚い言葉を使った、という可能性を私は考えています。

 まずなにより従業員さんは接客中ですから長々とした指示書を読ませる余裕はありません。瞬発力のある言葉が必要です。そこで上司のキャラクターの一環としてああいった汚い言葉を使ったのか、逆にこの手の指示の出し方が伝わるタイプの従業員だからそのように書いたのかと考えられるわけです。

 ビジネスマナーや社会通念に合致したスマートな言葉遣いというのは、得てしてスルーされがちであります。上司としてはスルーさせてはならないわけですから、内容はともあれ、何かしらパンチの効いた文言を使わざるを得なかったのではないでしょうか。


(2)について

 イージーミスなのか、逆に従業員さんが上司の指示を嫌気するあまり、ある種の自爆テロ的な思惑でわざと出したのか。両方の可能性が考えられます。
 いずれにせよ、このお店のこれまでの内情がどうであったかを想像させるには充分過ぎるものがあります。


(3)について

 お店の運営を非正規雇用に依存し過ぎるとどうなるのか、悪いお手本になると思います。

 まずなにより不祥事を起こした時のトラブルシューティングは経験が重要です。もしもこのドコモショップの幹部スタッフの誰かがトラブルシューティングの経験を重ねている人物であったならば、このような悪手は絶対に取らなかったでありましょうし、それを非正規雇用の人に望むのは酷でありますから、だからこのような最悪の事態に至ったのだろうと想像されます。

 手前味噌ではありますが、私は若い頃にコテコテの体育会系環境に身を置いた経験から、偉い人につべこべ言わずにただちに全力で謝る瞬発力については、そこそこ自信があります。

 その体育会系環境で培ったノウハウは後に社会人になった後に活かされ、ある時は身一つで反社会的な人達の居る場所に謝罪に送り込まれ、またある時は某電鉄系大企業のお偉いさんの元へ謝罪に出向く羽目になるなど、他人の尻拭いをしながらさらなるスキルアップに努めてまいりました。

 そういった私の経験からすると、仮に私がこのドコモショップの管理職としてその場に居たとするならば、まずは他のお客様の前であろうとなかろうと即座にそのお客様の足元にひざまずき、床に頭を擦り付けてお詫びし、許しを請うに違いありません。

 そこまですると大抵の人は「いやいやそこまでしなくても・・・」となって初期消火に結びつくのでありますが、さはさりながら、非正規雇用の人がそこまで出来るか、腹を決められるかと言いますと、それもやはり難しい所でありまして、その覚悟のほどが違いとして出るのでは無かろうかと私は考えます。



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 冒頭で私は今回の件を構造問題と書きましたが、それについてご説明申し上げます。


 かつて携帯ショップの仕事というのは同年代が就く職業と比べて非常に待遇が良く、恵まれておりました。

 私は最初から正規雇用としてこの世界に入りましたが、運良く営業成績も良かった為、同世代の人達の倍以上の年収を得ていましたし、私のようなそれまで箸にも棒にもかからなかったような人間でも良い給料を得られるとあって、私の後に続く人も少なくありませんでした。
 当時は世の中が非常に不景気でしたので、私の会社に転職してくる人達の中には誰もが羨む大企業の正規雇用の座を捨ててまでやって来た人や、東大京大クラスの高学歴の人も珍しくありませんでした。


 それは正規雇用だけでなく、当時蔓延していた違法な偽装請負(それを派遣と呼んでいた)で働く人々の給料も良く、世間のフリーターさん達が時給800円から900円くらいで働いていた時代に、偽装請負(自称派遣)の給料は時給1500円を超えるのが当たり前となっていました。

 
 それらと比べて現状はどうかと言いますと、所帯持ちの人は正規雇用でも苦しいと感じるくらい厳しい環境になっております。


 給料と求職者の労働意欲は比例すると言っても過言ではありません。


 給料が高い仕事は求職者もたくさん居ますから、企業はよりどりみどりです。

 私が携帯ショップのサラリーマンをしていた時は、アルバイトさんには元看護師さんを好んで採用するようにしていました。
 看護師さんは気配り目配りが出来なければ患者さんの生命に直結しますから、気配り目配りがとてもハイスペックなのです。
 それに妙に業界慣れしているよりも一般消費者の感覚に近い人の方がお客様の受けも良いですから、そういう意図を持った採用活動をしていました。


 しかし、給料が安い仕事には、そもそも応募者が多くありません。ですから選ぶ余地がないのです。いきおい、労働意欲の低い人でも採用してしまう事になります。


 労働意欲の低い人とはどういう事なのかと言いますと、究極的には勤務時間に勤務場所に留まり続けさえすれば良いという感覚の人を指します。

 例えば、お客様が何かお困りの様子なのがアリアリとわかる状況なのに、見て見ぬ振りをしてやり過ごそうとしたり、指示をした事を守らなかったり、そういう問題を常に抱え続けなければなりません。


 先程のドコモショップの事例においても、上司が従業員さんに対して本人なりに一生懸命指示を伝えようとしている(手段は最悪ですが)わけですが、これがもし労働意欲の高い従業員さんに対する指示であったとすれば、そもそもこんなメモ書きを出すまでも無かった筈でして、このような状況が、今まさに各地の携帯ショップにおける構造問題として生じつつあるのだと私は申し上げたいのであります。



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 携帯ショップに対して様々な方面からの無茶振りが、あまりに度が過ぎているように私は感じています。


 ドコモを筆頭に高齢者にスマホを買わせようという動きを強め、有料オプション契約の獲得率を競わせ、消費者保護のお題目の元に説明事項をどんどん増やし、携帯ショップの負担は増える一方です。

 
 そうかと思えば政府からは「携帯料金を4割安くせよ」のお達しが出て、そのしわ寄せが手数料収入の低下となって携帯ショップに直撃し、従業員には職務内容に見合った充分な給料を支払えなくなっています。


 消費者は消費者でより一層携帯ショップにありとあらゆる説明を求め、やれネット通販の使い方を教えろだの、やれSNSの使い方を教えろだのと圧力を強めています。


 このように360度全方位からサンドバックにされて叩きのめされているのが、近年の携帯ショップ、特にキャリアショップなのであります。

 こんな事では早晩キャリアショップがパンクしてしまうのではないかと、私はとても危惧しています。
 

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 私に提案があります。


 携帯スマホの使い方がわからずに説明を求めている契約者の対応をキャリアショップに担わせるのを止め、キャリアが自ら説明員を雇用して、その説明員が契約者の元を訪れるようにするのです。


 要するに、旧来型の生命保険会社が行っているのと同じような事をやりなさい、という趣旨であります。


 その説明員としては、デパートの外商を務めていたような人々が良いのではないでしょうか。

 近年はデパートの経営難が続いており、こちら山梨でも甲府駅目の前の山交百貨店が昨年末で営業を終了してしまったりという状況です。

 そして、だとすればそういったデパートでお金持ち相手の外商を務めていた人々のスキルが宙に浮いている事が予想されるため、長年培った外商のスキルを説明員として奮っていただいてはどうでしょうか。


 もちろん、説明員を送り込むからには契約者には相応の負担を求めなければなりません。ですからそこはキャリアの大好きな有料オプションとして契約して頂き、キャリアが喉から手が出るほど欲しているARPUの向上に繋げていってはどうでしょうか。

 だいたいデパートの外商というのはその土地で燦然と輝く大ブランドですから、その地域の契約者の皆様に「元○○デパートの外商員が説明員として伺います!」とでもPRしておけば、それはそれはたいそう有難がって貰えるのではないでしょうか。


 そうする事でキャリアショップの負担を軽減し、無理やりなオプション押し売りを止め、ARPUの向上を図ってくださいというご提案であります。



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 近年はスマホジャーナリスト的な肩書を持つ人々がテレビやネットメディアを中心にご活躍する姿をよくお見かけしておりますが、やはりそういった方々は諸々のステークホルダーの会社や人々に対する配慮も必要で、書きたくても書けないような裏事情も、少なからずあるのだろうと推察致します。

 その点、私にもそういったしがらみは少なからずあるものの、それらは基本的にスマホジャーナリスト的な方々と重ならない事もしばしばありますので、私は私で微力ではありますが、書ける事を書いていきたいと考えております。


 まずは、このように業界は危機を迎えているという事をお見知り置きいただければ幸に存じます。




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