ナンバーポータビリティで契約してくれたお客さんに対するポイント特典が悪用されているという産経新聞の記事に関して、「新規契約者ばかり優遇して長期利用者を優遇しないのはおかしい」という消費者の批判の声が再び高まっています。
この種の批判は私が携帯業界に身を投じた2000年頃から既にありましたが、当時は携帯キャリアが利用年数に応じた長期利用割引を設定したり(しかも勝手に適用され割り引かれる)、利用金額に応じたポイントを付与してそのポイントを機種変更時の端末購入代金に充てる事ができるようなっていたりして、それなりには長期利用者に相応の待遇をする仕組みが整えられていました。
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↑こんな事もありました
ですからお客様に丁寧に説明さえすれば、ほぼお怒りは収まっておりました。
しかしながら、そういった長期利用者向けの優遇施策に異を唱え始めたのが政府と総務省でありました。
私がかつてTVチャンピオンでご一緒させていただいた石川温さんの記事でありますが、MNPで他キャリアへの移行を活発に行って欲しいと考える当時の首相官邸や総務省の思惑から規制が掛けられるようになりました。
だが、ここ最近、長期契約ユーザーの優遇が強化されたのは、数年前に総務省の有識者会議で「同じ携帯電話会社を使っているのに、優遇されないのはおかしい」という指摘があったからだ。当時も競争政策を議論している中で、本来であれば長期契約ユーザーを優遇するのは競争政策とは逆の方向性になるのは明らかだった。しかし、そうしたことは配慮せず、長期契約ユーザーを優遇するように各キャリアを促したのは総務省なのだ。
総務省も当初は長期利用者を優遇せよと言っていたのですが、この記事の時点で全く逆の事を言い始めたと石川氏が指摘しています。
ですから消費者の皆様には、これは政府が民間の携帯キャリアに無理強いしている規制なのであると知って欲しいのであります。
長期利用者への優遇に賛成するにせよ反対するにせよ意見は様々あろうかと思いますが、あくまで差配しているのは政府であり総務省ですから、携帯キャリアに批判の矛先を向けるのはお門違いであります。
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携帯電話業界が総務省の朝令暮改に振り回されて様々な実害を被るような事態は、長期利用者向け施策以外にも多々起きています。
コロナ禍の直前では「ドコモショップは混み過ぎているから予約制にしろ」と官房長官直々の指示が降りてきたのが、今度はオンライン対応を強化しろという指示を飛ばしてきた事もありました。
端末の値引き規制も度々の変更が繰り返され、その影響もあって5G端末の普及が進まないとなって5G端末だけ割引額を増やしても良いと言い出してみたりしています。
携帯電話サービスに対する消費者の批判的意見はたいてい携帯キャリアに向けられます。
普通の民間事業であれば、事業主体に批判の矛先が向かうのが当然です。
ですが、携帯電話業界に関して言えば、箸の上げ下ろしに至る様々な事柄が総務省によって日々動いている関係上、企業側ではどうにもならない事が非常に多いのでありまして、そういった現状をぜひ皆さんに知っていただきたく存じます。
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